GeForceのTensor Core性能を引き出す有志の検証が、ローカルAI利用者の間で注目されています。対象として報告されたのはRTX 20、30、40世代の一部製品です。改善幅は演算の種類や作業によって異なります。どの演算で数値が伸び、実際の画像生成やLLM処理にどれほど効いたのかを、開発者の測定記録から整理します。
有志プロジェクトの発表内容
2026年10月25日、TweakTownは3世代にまたがるTensor Core演算制限解除の試みを報じました。検証対象は開発者が個別に試したGPUと構成です。今回の数値は、各プロジェクトが公開した実験結果に当たります。
共通する狙いは、FP16やBF16の入力をFP32で累積する行列演算について、GeForce側の命令発行速度を変更することです。処理対象は主にTensor Coreを使う計算で、VRAM容量、メモリ帯域、CUDAコア数は変わりません。各開発者は通常のNVIDIAドライバーがGPUを初期化する前に設定を適用する方式を報告しています。
RTX 20世代:RTX 2080 Tiの単体検証
Turing-unlockの公開記録では、GeForce RTX 2080 Tiを搭載した1台で、FP16入力・FP32累積の命令測定が46.94から93.66 TFLOPSに増えました。同じ構成で測ったcuBLASの行列積は48.15から85.17 TFLOPSです。前者は演算命令の発行能力、後者は行列積という具体的な計算の測定値で、伸び率が異なります。
この検証は特定のASUS製RTX 2080 Ti、マザーボード、ファームウェア、Linuxドライバーの組み合わせです。開発者は汎用インストーラーを配布しておらず、成功例はこの構成の1台です。
RTX 30世代:RTX 3090 Tiの行列積
GPU Unlockの公開データには、GeForce RTX 3090 Tiを450Wの電力上限で測った行列積の中央値が掲載されています。FP16は87.46から118.39 TFLOPS、BF16は87.50から157.41 TFLOPS、TF32は42.58から82.61 TFLOPSへ増えました。改善幅はFP16、BF16、TF32でそれぞれ異なります。
同プロジェクトはRTX 3090、RTX 3080、RTX 3070、RTX 3060などの利用者報告も列挙しています。RTX 3080 Tiの一部改造カードでは解除処理が完了してもBF16の改善が見られなかった例があり、カードごとに結果が分かれています。
RTX 40世代:RTX 4090と実アプリの差
Ada世代向けの別プロジェクトは、GeForce RTX 4090でFP16入力・FP32累積の命令測定が165.6から331.6 TFLOPS、BF16が165.5から330.6 TFLOPSに増えたと報告しました。一方、別のRTX 4090所有者による同一条件のcuBLAS測定では、行列の形によりFP16の改善は12~34%、BF16は16~20%またはほぼ変化なしという結果です。
同資料にはGeForce RTX 4070 Ti SUPERを使った実験もあります。RTX 4090を中心とする個別試験で、命令速度、cuBLAS、アプリ全体の処理時間は測定対象が異なります。
画像生成とローカルLLMへの影響
RTX 30世代のプロジェクトでは、行列演算を多く使うLLMのプロンプト処理で14~36%の改善例が報告されています。プロンプトを読み込む段階は大量のトークンをまとめて処理するため、計算能力の変化が出やすい部分です。画像生成でもBF16を使うワークロードに改善例があります。
LLMが文章を1トークンずつ生成する段階は、同資料ではほぼ変化がありませんでした。こちらはメモリ帯域の影響が大きく、演算命令の速度を上げてもボトルネックが残ります。量子化モデルが使うINT8などの演算も対象が異なり、Ada世代の公開測定ではINT8の速度はほぼ同じでした。ローカルAI用途でも、使う精度と処理段階が効果を決めます。
ゲームの描画速度やDLSSのフレームレートについて、各開発者は改善を示していません。GPUの演算資源全体を増設する仕組みではないため、ゲーム用途を目的にした導入判断には結び付きません。特にRTX 40世代の結果には、命令測定が約2倍でも特定の量子化LLM処理は改善しなかった例も含まれます。
対応範囲と現時点の位置づけ
RTX 20、30、40世代には、それぞれ別の実装と検証範囲があります。Turing-unlockは特定のRTX 2080 Ti向け研究、RTX 30世代のGPU UnlockはLinuxカーネルモジュール、Ada世代版はRTX 4090を中心に試験した派生版です。いずれもGPUの電源を完全に切ると設定は戻る方式で、NVIDIAの公式サポート機能ではありません。
今回、既存のGeForceで一部の行列演算を速められる余地が実測されました。特にBF16を多用する画像生成やLLMの入力処理を扱う人には、検証されたGPUとワークロードの組み合わせが参考になります。24GBカードの選び方や容量の使い道は、記事末尾にあるRTX 3090 TiとRTX 4090の解説へ進むと具体的に比べられます。
