AMD Radeon PRO W7600はBlender CyclesのHIP経由でGPUレンダリングに対応します。Blenderの公式マニュアルはRadeon Pro W7000シリーズを対応対象に挙げており、WindowsとLinuxで利用できます。レンダリングの速さはGPUの理論TFLOPSに加えて、Blenderの描画経路にも左右されます。Puget Systemsの実機テストとBlenderの設定条件を合わせて、W7600で期待できる処理を整理します。
Blender CyclesのHIP対応
Blender 5.1のGPUレンダリングマニュアルは、AMDのHIPバックエンドにRadeon Pro W7000シリーズを含めています。W7600はRDNA 3世代なので、Blenderが示すRDNA 1以降の条件を満たします。公式マニュアルが記載する最低ドライバーはWindowsでRadeon Software 24.9.1またはRadeon PRO Software 24.Q4、LinuxではRadeon Software 23.40またはROCm HIP Runtime 6.0です。
| 設定項目 | W7600で使う内容 |
|---|---|
| 描画エンジン | Cycles |
| 計算バックエンド | HIP |
| 対応OS | Windows、Linux |
| 搭載VRAM | GDDR6 8GB |
| ハードウェアレイトレーシング | 対応ドライバーで利用可能 |
設定はBlenderのプリファレンスで「System」からCycles Render DevicesのHIPを選び、表示されたW7600を有効にします。続いてシーンのRender PropertiesでDeviceをGPU Computeに設定します。HIPを選んだだけでは、各シーンが自動でGPU Computeに切り替わるわけではありません。ワークステーションへ導入する際は、AMDのW7600ドライバーページから使用OSの対応版を入手できます。
Blender 3.6の独立実測
Puget Systemsの2023年のテストは、Blender 3.6でGPUレンダリングを測りました。使用PCはThreadripper PRO 5975WX、Windows 11、メモリ128GBです。同社掲載のBlender GPU ModeスコアはW7600が1,188、前世代W6600が986、RTX A2000が2,139でした。同じテスト条件ではW7600がW6600を上回り、A2000には大きく離されています。
このスコアはBlender 3.6時点の結果です。Pugetはベンチマーク本体にはAMDのHIP-RTによるRTコア利用が含まれなかったと説明し、別の検証ではHIP-RTで10~25%改善すると報告しています。その改善を加えても当時のA2000との差は埋まらないという評価でした。現行のBlenderとドライバーでは実装が進んでいるため、2023年の測定値は、当時のBlender 3.6とドライバーによる比較です。
HIP-RTとビューポートの違い
Blenderの現行マニュアルは、対応ドライバーとRadeon RX 6000以降でハードウェアレイトレーシングを使えると記載しています。W7600には32基のレイアクセラレーターがあります。Cyclesでの最終レンダリングでは、シーンの材質、光源、反射や透過の使い方でRT処理の割合が変わります。HIP-RTを有効にして効果が出る場面は、レンダー処理の構成によって異なります。
モデルを編集するときのビューポート操作と、Cyclesで画像を完成させる処理は負荷の種類が違います。W7600はCADやリアルタイム表示で良好な結果を示す一方、PugetのオフラインレンダリングではA2000が強いという組み合わせです。3D制作が主目的なら、編集画面の快適さと完成レンダーの所要時間を分けて評価できます。CPUレンダリングも選べますが、同じシーンでGPUより速いかはCPUとシーンの条件によります。
8GB VRAMとシーン規模
W7600のVRAMは8GBです。高解像度のテクスチャ、複数の大きなメッシュ、複雑なジオメトリを同時に保持するシーンでは、容量がレンダリング時間に影響します。Blenderのマニュアルは、GPUメモリが埋まった場合にシステムメモリを使おうとする仕組みと、その際の性能低下を説明しています。大きいシーンを扱う人にとって、速度より先に容量が選定条件になります。
Blender公式のシステム要件は推奨グラフィックスメモリを8GBと案内します。W7600はこの目安に達しますが、シーンにより8GBを超えるため、大量のテクスチャを使う制作なら16GB以上のGPUが候補です。コンパクトなモデル制作やCADからの簡易可視化なら、W7600の全高1スロット・130Wという実装上の利点もあります。
Blender用GPUとしての結論
W7600はBlenderのHIP対応リストに入るカードで、CyclesのGPUレンダリングを使えます。2023年の同条件テストではW6600より速く、A2000より遅い結果でした。導入時はHIPの有効化とVRAM 8GBで扱えるシーン規模を決めます。ほかの制作アプリも使うなら動画編集とAV1の評価を、カード全体の位置づけは仕様と独立実測を参考にできます。
