AMD Radeon PRO W7600の性能を判断する際は、仕様表のTFLOPSと実際の制作アプリの結果を分けて見ると、用途がはっきりします。W7600はRDNA 3世代のワークステーション向け8GBカードです。CADの表示、複数画面での作業、動画のH.264/HEVC処理では堅実な結果があり、巨大な3Dシーンを扱う用途では8GBの容量が先に制約になります。主要な数値と独立テストをまとめました。

Radeon PRO W7600の基本仕様

AMDの現行仕様ページでは、32基のCompute Unit、2,048基のストリームプロセッサ、32基のレイアクセラレーターを記載しています。FP32の理論ピークは20TFLOPS。グラフィックスメモリはGDDR6 8GB、128bit接続で、最大帯域幅は288GB/sです。32MBのInfinity Cacheも搭載します。

項目 AMD公表値 作業での意味
GPU RDNA 3、32 CU CAD表示と汎用GPU処理の基盤
メモリ GDDR6 8GB、最大288GB/s 保持できる容量とメモリ転送速度
電力 TBP 130W 6ピン補助電源を1本使用
形状 全高、長さ241mm、1スロット 薄型でも全高ブラケットが必要
映像出力 DisplayPort 2.1を4端子 4Kまたは5Kの4画面構成に対応

20TFLOPSは決まった演算での理論上限です。CADの操作速度はモデルの複雑さ、表示モード、アプリの描画経路にも左右されます。仕事用の選定では、理論値と併せて使うソフトの実測や認定構成を見ると、数字の意味を判断できます。特にW7600のメモリ容量は、後継の大容量カードと比較する際に差が出る部分です。

CADと可視化の実測

AMDのデータシートには、SPECapc SOLIDWORKS 2022の4KテストとSPECviewperf 2020の条件が記載されています。SOLIDWORKSの特定表示テストでは、NVIDIA RTX A2000 12GB比で最大43%高い結果を公表しました。メーカー測定なので、すべてのCAD操作が43%速いという意味にはなりません。公表値の対象はそのベンチマークと表示設定です。

独立したStorageReviewの実機テストでは、ArcGIS ProのMontreal表示でW7600が平均129.84fps、W7500が87.61fpsでした。Phillyでは123.02fpsと90.32fpsです。同じ測定系の比較で、W7600の処理力を具体的に確認できます。Portland表示はモデル間の順位が大きく変わっており、単一の数値から全アプリの優劣は決められません。扱う表示データに近い結果が有用です。

動画と3Dレンダリングの位置づけ

Puget Systemsの実測では、DaVinci ResolveのGPU効果スコアがW7600で63、RTX A2000で58でした。Premiere Proでは両者の結果が近く、ResolveのH.264/HEVC処理でもW7600はA2000と近接しています。W7600はAV1のエンコードとデコードをハードウェアで備えるため、対応アプリの動画素材や配信にも使えます。アプリがどのコーデック経路を使うかで、効果の出る工程が変わります。

Blender Cyclesでは結論が異なります。Puget SystemsのBlender 3.6ベンチマークはHIP-RTを含まず、RTX A2000がW7600を上回りました。同社は別途HIP-RTで10~25%改善すると測定しましたが、それでもA2000が優勢との評価です。ビューポート表示と最終画像のレンダリングは別の処理です。リアルタイムのUnreal Engine表示ではW7600の結果が良い一方、Cyclesの完成レンダーを短くする目的なら別のカードまで比較する価値があります。

電源、筐体、画面の条件

AMDの現行ページはTBP 130W、6ピン補助電源1本、最低500Wの電源ユニットを案内しています。2023年発行の古いデータシートには350Wの推奨値が残っていますが、現行製品ページの500Wを購入時の基準にします。カード長は241mmで1スロット幅。薄いスロットに収まる設計でも、ブラケットは全高です。ロープロファイル専用ケースに入るカードではありません。

DisplayPort 2.1端子は4個。AMDのデータシートは4Kまたは5Kの4画面、8Kの2画面構成を示しています。画面数だけでなく解像度ごとの組み合わせが明記されているため、設計用マルチモニターの計画を立てやすい仕様です。10bit出力も公式仕様に含まれます。色管理はディスプレイやアプリ側の設定と組み合わせて使います。

まとめ

W7600は8GB、130W、全高1スロットという枠の中で、CAD表示と動画処理に明確な強みを持つプロ向けカードです。CPUやメモリも含むワークステーション全体を組む際は、W7600の電源と6ピン配線を先に決めると構成が固まります。制作アプリを絞って検討するなら、CADの認定と実測とBlenderのHIPレンダリングで処理ごとの評価を確認できます。