Radeon Pro W7900は48GBのメモリに加え、AV1のハードウェアエンコードとデコードに対応します。動画編集では、タイムラインの再生、エフェクトの処理、書き出しを別々に見る必要があります。同じGPUでも、素材のコーデックと解像度、使う編集ソフトで負荷のかかる部分が変わるからです。AMDの公式仕様とPuget Systemsの制作向け実測を使って選び方を整理します。
AV1対応が役立つ工程
W7900はAV1のエンコードとデコードをハードウェアで処理できます。DaVinci Resolve 20の公式対応表は、Windows版のAV1読み込みと書き出しをGPUアクセラレーション対象に挙げています。対応表の脚注は実際の加速がハードウェア対応に依存すると明記しており、W7900のAV1回路はその条件に合います。
AdobeのPremiere公式案内は、ハードウェアによる書き出し・再生の対象としてH.264とHEVCを説明しています。Premiereでの編集性能をW7900のAV1回路だけから評価できません。素材を複数のコーデックで混在させる仕事では、タイムラインの再生とエフェクトを分けて測ると、デコードとGPU演算のどちらが待ち時間を作るか見えます。
エフェクトと書き出しの実測
Puget SystemsのDaVinci Resolveテストでは、W7900のGPU Effectsスコアは171で、W7800の122を上回りました。拡張総合スコアはW7900が2735、W7800が2505です。一方、同レビューのH.264/HEVCテストではW7900が115.2、W7800が116.5で、上位カードによる明確な短縮は見えません。GPUエフェクトの処理とコーデック依存の処理を分けて判断する必要があります。
同レビューはPremiere ProでもW7900を測り、当時のRTX A6000に近い結果を示しました。ただし、これらは2023年の編集ソフトとドライバー、テスト素材での結果です。現在利用する版の結果は、2023年の測定順位と変わる余地があります。レビューの点数を現在の書き出し時間として扱わず、どの工程で性能差が出たかを読む材料にします。
48GBが必要になる素材
4Kの一般的な単一タイムラインと、8K以上の素材や複雑な合成、複数の高解像度ソースを重ねる工程では、必要なGPUメモリが異なります。W7900の48GBは、エフェクトやFusionのノード、GPU上のキャッシュが大きくなる制作で余裕を作れます。GPUメモリ不足でプロキシや分割作業が必要になっているなら、容量の増加は工程を減らす可能性があります。
素材をたくさん置くだけで48GBを使い切るとは限りません。編集ソフトがCPUメモリへ置くデータ、GPUへ置くフレーム、ディスクのキャッシュは別です。現在の案件でGPUメモリのピークを確認し、32GBを超えるかを見ます。超えないなら、W7900の追加容量だけを根拠に費用を正当化するのは難しく、実際のエフェクト処理時間や書き出し時間の差が判断材料になります。
数字が示す短縮範囲
Puget SystemsのResolveテストを同じ指標内で比べると、W7900のGPU Effectsスコア171はW7800の122を約40%上回ります。一方、拡張総合スコアの2735対2505は約9%の差です。H.264/HEVCの115.2対116.5では両者はほぼ並びます。W7900が効くのは、GPUエフェクトや大きなGPUメモリを使う工程です。最終書き出しがH.264/HEVC中心の仕事なら、同テストはW7900への増額に見合う差を示していません。
一時間の案件でも、色補正・ノイズ処理・合成の待ち時間が長いか、デコードや書き出しが長いかで選択は変わります。Premiere ProとResolveは処理経路も異なります。AV1納品を中心にするなら、今回確認した公式資料ではWindows版DaVinci Resolve 20がGPUアクセラレーションを伴うAV1書き出しに対応します。AdobeのPremiere資料はハードウェア加速の対象をH.264とHEVCとして案内しています。
まとめと選定手順
まず素材のコーデック、解像度、ビット深度と編集ソフトの版を固定します。次に、タイムライン、重いエフェクト、最終書き出しのうち、待ち時間が長い工程を記録します。AV1納品が多ければ、DaVinci Resolve 20のWindows版でAV1書き出しと画質設定を試します。Resolveのエフェクトが中心ならPugetのGPU Effects結果が参考になります。H.264/HEVC中心の書き出しなら、同レビューでW7900とW7800が近かった事実も踏まえます。
W7900を一枚で運用する際は、編集機材と同じケースに収まる3スロットの空間、750W以上の電源、映像I/Oカードのための空きスロットも確保します。拡張カードが多い構成ではDual Slot版が候補です。GPUの選択は、AV1という機能名だけで決めず、自分の素材と待ち時間の大きい工程で決めましょう。
