Radeon PRO W7700は、AV1のエンコードとデコードに対応する映像制作向けGPUです。16GBのメモリと4つのDisplayPort 2.1も備えます。ただし編集作業の速度は、素材を読む処理、エフェクトを計算する処理、完成動画を書き出す処理で決まる要素が違います。W7700が担当できる範囲を整理します。
AV1とH.264・H.265の対応
AMDの製品仕様は、W7700のAV1に1系統のエンコード・デコード、H.264とH.265に2系統のエンコード・デコードを記載しています。AV1素材の再生とAV1動画の書き出しに、GPU側の専用処理回路を利用できます。実際のGPU処理経路は、編集アプリの版、OS、色深度、クロマ形式などで決まります。
Puget SystemsのDaVinci Resolve解説は、素材のデコードが実際にハードウェア処理されているかを確認する方法を示しています。プレビューが重い時は、メディア形式がGPUのデコード経路に乗っているかを見ると、GPUの交換で解決する問題か判断できます。
タイムラインとエフェクト
映像編集ではデコードだけでなく、カラーグレーディング、ノイズ除去、合成、FusionなどがGPUを使います。Mobile01の実機レビューはW7700をDaVinci Resolve向けPugetBenchで測定し、総合2847点、4Kメディア処理174点、GPU効果100点、Fusion580点と報告しました。PugetBenchの各項目は、メディア処理とGPU効果、Fusionという異なる編集負荷を示します。
W7700の16GBは、4K以上のフレームを扱いながらGPU効果を重ねる環境で余裕を与えます。GPUメモリを多く使う効果を連続させる場合や、編集ソフトと3D制作ソフトを同時に開く場合にも価値があります。素材を読むだけの軽いカット編集ではCPUとストレージ側が先に効く構成もあります。
書き出し時間の内訳
書き出しでは、素材の読み込み、エフェクト処理、最終コーデックへのエンコードが順に進みます。AV1のハードウェアエンコードに対応していても、重いエフェクト処理が中心ならGPU演算やメモリ容量が時間を左右します。逆に効果が少ない素材でエンコードが中心なら、AV1対応の有無が効きます。編集アプリの書き出し設定でハードウェアエンコードが選べる構成なら、W7700の機能を活用できます。
配信先や納品先の形式がH.264・H.265中心でも、W7700の専用回路が利用できます。AV1だけを理由に選ぶより、使用する素材形式と納品形式を先に固定すると、購入判断を絞れます。
制作モニターの構成
W7700はDisplayPort 2.1を4基備えます。AMDは4K DCI・120Hzの4画面表示をDSC使用時の対応例として案内しています。プレビュー画面、タイムライン、スコープ、資料を分ける作業スペースを作れる構成です。映像の色確認には出力側だけでなく、モニター側の色再現と校正も関係します。出力規格の詳しい条件は4画面記事で確認できます。
AV1を使う制作の流れ
AV1で撮影・収録した素材を編集するなら、最初に編集アプリがその素材をどの経路でデコードするかが効きます。W7700のデコード回路が使われる経路ならプレビュー時のCPU負荷を下げられます。エフェクトを重ねた後はGPUによる画像処理が入り、完成した映像をAV1へ書き出す時にはエンコード回路が働きます。同じAV1でも作業の三段階で別の処理をしているため、どこで待つかを見れば対策が変わります。
納品先がH.264だけを受け付ける場合も、W7700の対応形式にH.264のエンコード・デコードが含まれます。編集素材がH.265なら、そちらのデコード経路も使えます。使用する素材の色深度とクロマ形式まで含めて編集アプリ側の対応を確定し、制作の途中でプロキシ変換が必要かを決めます。機材選びではGPU仕様とアプリの対応をつなぐ、この工程が実務上の差になります。
W7700のAV1エンコードは最終出力、デコードは素材の読み込みで使います。PugetBenchのGPU効果項目は別の処理です。現在の制作で時間がかかる工程を分けると、16GBと専用回路のどちらが効果を持つか見えます。
動画編集での結論
AV1の入出力、16GBのGPUメモリ、4画面出力をまとめて使う制作環境にW7700は合います。Mobile01の公開ベンチマークは編集負荷での実測を補い、AMD仕様はコーデック対応を確認する根拠です。現在の編集で詰まっている処理がデコード、エフェクト、エンコードのどこかを特定し、W7700の機能と対応させて選びましょう。
