Arc Pro B60とGeForce RTX 3090は、どちらも24GBのVRAMを持つためローカルLLMの候補に上がります。ただし同じ容量でも、推論エンジン、電力、カードの購入条件が異なります。公開仕様を表にして、モデルを載せる能力と応答速度の評価を切り分けます。

24GBの共通点と仕様差

IntelのB60製品仕様とNVIDIAのRTX 3090仕様では、専用VRAMはいずれも24GBです。B60はGDDR6でメモリ帯域456GB/s、標準TBP 200W。RTX 3090はGDDR6Xでカード電力350Wです。製品の設計世代や演算の実装が違うため、ピークTOPSやCUDAコア数を横並びにして推論速度を計算することはできません。

項目 Arc Pro B60 GeForce RTX 3090
VRAM 24GB GDDR6 24GB GDDR6X
公称カード電力 200W 350W
主なGPUソフト経路 Intel XPU、SYCL NVIDIA CUDA
用途上の共通点 単体24GBのモデル配置 単体24GBのモデル配置

電力差150Wは両社の公称カード値の差です。実際のLLM推論時の消費電力差を測った値ではありません。冷却設計や電力制限、推論バッチで実測が変わります。RTX 3090のFounders EditionはNVIDIAが必要システム電力750Wと2本の8ピンを案内していますが、他社製カードでは仕様が異なる場合があります。

推論ソフトの選択肢

llama.cppのSYCLバックエンド資料はIntel Arc向けの導入経路を説明しています。B60でGGUF形式のモデルを使うなら、Intel GPUとoneAPIのドライバが整った環境でこの経路を選べます。Intelのllm-scaler vLLM版もB60/B70向けに公開されています。これはIntel XPU向けの実装であり、CUDAを前提にした手順のコマンドをそのまま実行する構成とは違います。

RTX 3090はNVIDIA GPUなので、CUDA対応の推論ソフトを使う構成になります。比較する際は、同じモデル、同じ量子化、同じ入出力トークン長、同じ同時要求数の実測が必要です。B60のSYCL実測とRTX 3090の別形式のCUDA実測を並べても、ソフト側の差が混ざります。両者の24GBで同じモデルを収められる場合でも、対応する量子化形式や高速化機能が異なります。

容量と運用上の境界

モデルの重み、KVキャッシュ、ランタイム領域の合計が24GBを越えると、どちらも単体GPU上では不足します。VRAMが同容量だからといって、メモリの空き量まで完全に同じではありません。ドライバやランタイムが使う領域も経路ごとに違います。B60と3090の優劣を「24GBなら何Bまで」という一行で判断しにくいのは、この実装上の差があるためです。

B60を2枚に増やして大きなモデルを分割する方法と、RTX 3090を2枚にする方法もあります。ただし合計容量はソフトによる重み分割を前提とし、単一の48GBカードと同じ扱いではありません。PCIe配線、補助電源、カード間通信が2枚構成の費用と速度に関わります。1枚で24GBが足りるなら、まず単体構成同士で比較する方が条件を揃えられます。

販売形態と価格

2026年9月26日のPCワンズの掲載では、SPARKLE製B60 24GBの新品取り寄せ価格は税込178,800円です。RTX 3090は旧世代で、新品と中古の販売条件が混在します。本記事では同じ販売条件のRTX 3090の価格を確保できていないため、両者の円当たりトークン性能を算出しません。比較対象の状態と保証を統一して初めて購入価格の比較ができます。

実測データを選ぶ条件

B60とRTX 3090の推論ベンチマークを探す際は、モデル名と重み形式を一致させることが出発点です。4bitと8bitの量子化は必要容量も演算量も異なります。さらに入力トークン数と出力トークン数が違えば、最初の応答までの時間と生成中の速度の比率が変わります。単一ユーザー向けの対話と多数同時のサーバーでは、最適なバッチ設定も一致しません。

B60のSYCL版とRTX 3090のCUDA版で同じGGUFモデルを扱えば、ソフトの上位層をかなり揃えられます。ただしバックエンドの実装は異なるため、結果はGPUハードウェア単体の差ではなく、使用するランタイムを含めた構成の比較です。自分が実際に使う環境に近いデータほど、購入判断との関係が強くなります。CUDA専用のカスタム演算を使う既存ワークフローなら、B60側に対応する実装があるかも比較条件に加えます。

カードの搭載条件も違います。NVIDIAの公表するRTX 3090 Founders Editionは313mm長、3スロット、カード電力350W。ASRock製のB60 Creatorは271mm長、2スロット、8ピン1口です。これらは比較対象の具体的なボードの値であり、3090の他社製品やB60の別ボードを代表する値ではありません。ケースと電源の制約が厳しい構成では、この物理条件がソフトや速度と並ぶ判断材料になります。

まとめ

B60とRTX 3090は同じ24GBのモデル配置を狙える一方、Intel XPUとCUDAというソフト経路、公称電力、販売条件が違います。手持ちのモデルをどのエンジンで使うかを先に決めると、比較すべき実測が絞れます。B60単体の容量設計はローカルLLM記事、2枚構成はデュアルGPU記事も参照してください。