Arc Pro B70を2枚搭載すれば、32GB×2で物理的なVRAMは合計64GBです。しかし、1枚の64GB GPUとして自動的に使えるわけではありません。LLMの重みや計算を複数GPUへ分けるソフトと設定が必要です。2枚構成を考えるなら、まずモデル分割が可能か、次にPCIeスロット、電源、ケース、冷却の順で確かめましょう。

IntelのB70仕様は1枚当たり32GB、TBP 230Wです。Puget Systemsの複数GPU実測は4枚構成を測っています。以下で示す速度はその4枚測定であり、2枚を組んだ場合の実測値ではありません。2枚の候補として何が分かり、何がまだ分からないかを切り分けます。

2枚に分かれた64GBのVRAM

2枚のB70にはそれぞれ32GBのVRAMがあり、合計は64GBです。ただし、単一の処理が両方を使うには、モデルの層や行列を分けて各GPUに割り当てる仕組みが要ります。対応しないアプリでは片方の32GBしか使えず、もう片方が空いていても大きなモデルは読み込めません。複数の独立した推論ジョブをそれぞれ1枚で動かす使い方なら、分割なしで2枚を生かせます。

モデルを分割する方法には、層ごとの割り当てやテンソル並列などがあります。どの方法に対応するかは推論ソフト、モデル、Intel GPU向けランタイムによって異なります。購入前に、使いたいソフトの現行ドキュメントでIntel Arc Pro B70の複数GPU実行を確認してください。1枚で動くという報告だけでは2枚同時の対応を証明できません。

4枚実測から分かるオーバーヘッド

PugetのQwen2.5 3Bテストでは、FP16、入力500トークン・出力500トークン、ユーザー1人の条件で1枚が72.9 tok/s、4枚へテンソル並列した場合が62.6 tok/sでした。小さいモデルではGPU間の通信が利益を上回った例です。一方、Llama 3.1 8Bは同じ比較で35.4から70.3 tok/sになりました。複数枚で常に速くなるとも、常に遅くなるとも言えません。

同じPugetの4枚構成では、約54GBを要するQwen3.6-27BのFP16モデルを分割し、ユーザー1人で13.1 tok/s、8人同時では合計95.9 tok/sを測定しました。1枚の32GBには入らないモデルを動かせた実例です。ただし、これは4枚・計128GBの構成です。54GBというモデル重量が64GBより小さいことだけで、2枚構成でも同じ設定と速度で動くとは断言できません。実行時のワークスペース、コンテキスト、ソフトの分割方式にも容量が要ります。

マザーボードとPCIeの条件

まずケースに2枚分の物理スロットがあり、マザーボードの適切なPCIeスロットへ両方を挿せるかを調べます。ASRock Creatorは1枚で2スロットを占有するため、合計4スロット相当の空間だけでなく、カード間の吸気経路が必要です。2本の長いPCIeスロットがあっても、同時使用時のレーン配分がx8/x8になるなど、マザーボードによって動作条件が変わります。CPUとチップセットの仕様、スロット間隔をセットで確認しましょう。

PCIeの転送速度は、分割方式によってはGPU間通信の待ち時間に影響します。ただし、レーン数から推論速度の低下率を単純には計算できません。対象ソフトの複数GPUテストがあるかを先に探し、ない場合は実装と接続方式の制約を踏まえて判断してください。

電源とケースの負担

1枚当たりTBP 230Wなので、2枚の仕様値を足すと460Wです。ここへCPU、メモリ、ドライブ、ファンなどの電力を加えます。電源ユニットは合計の連続負荷と余裕を見て選び、両カードに必要な補助電源口を用意します。ASRock Creatorの製品仕様では1枚ごとに12V-2x6端子があり、8ピン2本からの変換ケーブルが付属します。同じカードを2枚ならケーブルの必要数も2倍です。

本体長271mmに加え、ASRockは電源ケーブル用に30mmの余裕を求めています。ケースの長さ、2枚の厚さ、排気経路を一緒に測ってください。とくに密着した2枚では下側のファンへの空気が制限されます。長時間のLLM推論を行うなら、設置後に各GPUの温度とクロックを監視し、冷却が足りなければ配置を見直します。寸法はケース適合の記事でも確認できます。

1枚構成からの判断

希望するモデルが32GBに収まるなら、最初は1枚構成の方が導入条件を絞れます。モデルが収まらない場合も、量子化で容量を減らせるか、必要な精度を保てるかを検討します。そのうえで2枚を選ぶなら、使うソフトの分割手順と必要メモリを確かめ、マザーボード・電源・ケースの追加費用を計上しましょう。

まとめ

Arc Pro B70を2枚にするとVRAMの総量は64GBですが、単一の64GB領域にはなりません。Pugetの4枚測定は、モデル分割で大きなLLMを動かせることと、小さいモデルでは並列化が逆効果になり得ることを示します。2枚構成の速度や対応は、選んだソフトとモデルで別途確認する必要があります。