Arc Pro B70は動画編集用GPUとして選べるのでしょうか。32GBのVRAMとAV1対応は魅力ですが、「AV1を扱える」と「どの編集作業も速い」は別の話です。Premiere ProとDaVinci Resolveの実測を見ると、B70は十分な性能を示す場面がある一方、RAW素材や一部のGPUエフェクトでは上位の競合に差をつけられます。

ここではIntelの製品仕様と、ワークステーション販売会社Puget Systemsの実機テストを分けて読みます。コーデックの対応表と、編集ソフト全体のスコアを混同しないことが購入の第一歩です。

AV1対応でできること

Intelの仕様表にはAV1、H.264、HEVCのハードウェアエンコードとデコードが記載されています。対応する素材を読み込む際は専用回路が復号を助け、AV1で書き出す際はエンコードを担当できます。CPUのみで処理するより負荷を分けられる可能性がありますが、実際に専用回路が使われるかは編集ソフト、素材のビット深度やクロマ形式、書き出し設定で変わります。

PugetはB70に2基のメディアエンジンがあると説明しています。HEVCの対応形式にも細かな違いがあるため、カメラから出る10bit 4:2:2素材を使う場合は、ソフト側の設定とハードウェアデコードの可否まで確認したいところです。「HEVC対応」という一行だけでは、自分の素材が常に高速にプレビューされるとは言えません。

また、AV1は最終納品のファイル形式の選択にも関係します。配信先やクライアントがAV1を受け付けるなら活用できますが、H.264指定の案件でAV1回路の存在自体が作業時間を短くするわけではありません。納品形式と日々の素材形式を先に洗い出すと、エンジンの価値が見えてきます。

Premiere Proの同条件テスト

Puget Bench for Premiereの測定では、Premiere 26.0、Ryzen 9 9950X3D、64GBメモリ、Windows 11を使っています。総合スコアでB70はArc Pro B50より56%、RTX PRO 2000 Blackwellより8%高く、一方でRadeon AI PRO R9700より16%、RTX PRO 4000 Blackwellより24%低い結果でした。同じPC上での比較なので位置づけを知る助けになりますが、他のCPUや素材へそのまま倍率を移せません。

LongGOP、IntraFrame、RAW、GPU Effectsの内訳には違いがあります。B70はGPU EffectsではB50の2倍超を示したものの、R9700とRTX PRO 4000には届いていません。RAWのサブテストはR9700に並ぶ程度で、NVIDIAの2製品からは大きく遅れました。B70を選ぶ際に、総合スコアだけでRAW編集を期待しすぎない方がよい理由です。

DaVinci Resolveの項目別結果

同じPugetのDaVinci Resolve 20.3テストでは、B70の総合スコアはRTX PRO 2000より27%高く、R9700より8%、RTX PRO 4000より17%低い位置でした。LongGOPとAIの項目ではR9700を5~10%上回る一方、RAWやGPU Effectsでは最大24%下回る測定もあります。FusionはRTX PRO 2000を下回りました。

PremiereとResolveで順位差があるのは、利用する処理の構成が異なるためです。自分の編集工程が長尺の圧縮素材を扱うのか、ノイズ除去やカラー処理を重ねるのか、RAWを多用するのかで、注目すべきサブスコアが変わります。Pugetの総合値は万能な「書き出し速度」ではなく、複数の作業を束ねた指標と考えましょう。

32GB VRAMが役立つ条件

32GBのVRAMは、多層の高解像度タイムライン、GPU処理のエフェクト、大きなキャッシュを扱うときに余裕を作れます。ただし、一般的な短尺動画で毎回32GBを使い切るわけではありません。メモリ容量で不足を防げる場合と、演算性能やソフトの最適化で速度が決まる場合を区別する必要があります。Pugetの測定は後者の差もよく示しています。

購入前には、いつものプロジェクトを一つ選び、元素材のコーデック、解像度、同時レイヤー数、使うエフェクト、納品形式をメモするとよいでしょう。AV1を書き出す頻度が高く、ローカルAIや3D制作にも同じPCを使うなら、B70の機能を複数の工程で生かせます。編集だけが目的なら、候補GPUで自分の素材に近いベンチマークを優先してください。

まとめ

Arc Pro B70はAV1を含む主要コーデックの専用回路を備え、Pugetの総合測定ではPremiere、ResolveともRTX PRO 2000を上回りました。RAW、GPU Effects、Fusionでは得意不得意が残ります。まず素材と処理の内訳を決め、32GBの容量が必要かを確認するのが選び方です。ケースやケーブルの確認は本体サイズの記事にまとめています。