Blenderで使うHIPとW7800
Radeon PRO W7800でBlenderのCyclesをGPUレンダリングする場合、AMD向けの計算方式はHIPです。Blender 4.5 LTSの公式マニュアルはRadeon PRO W7000シリーズをHIPの対象に挙げ、WindowsとLinuxで利用する条件を示しています。W7800はAMD公式仕様でRDNA 3、ECC対応GDDR6 32GB。重いシーンをGPUメモリへ載せたい制作環境に特徴があります。HIP対応に加え、レンダリング速度も実測で評価します。設定手順と独立テストの結果を続けて見ます。
Cyclesでの設定
Blenderでは「編集」→「プリファレンス」→「システム」のCyclesレンダーデバイスでHIPを選び、W7800を有効にします。そのうえで、各シーンのレンダープロパティにあるデバイスをGPU Computeへ切り替えます。プリファレンス側だけを変更しても、シーン側がCPUのままならGPUレンダリングへ切り替わりません。Blenderのマニュアルは、Windows側のRadeon Software 24.6.1またはRadeon PRO Software 24.Q2、Linux側のRadeon Software 23.40またはROCm 6.0をHIPの最低条件として示しています。実際の導入時には利用するBlender版に対応した現行ドライバーを選びます。
W7800の32GBは、テクスチャやジオメトリーの多いシーンをGPU側へ保持する余地を広げます。GPUに収まらないデータを含むシーンでは、容量が足りる構成への変更が作業を成立させる条件になります。一方、小さなシーンを描画するときの秒数は、VRAM容量だけでは決まりません。シェーダー、サンプル数、ノイズ除去、レイトレーシングの実装とGPUの計算速度が効きます。容量と速度を分けて評価するのが、W7800をレンダリング用に選ぶ核心です。
公開ベンチマークの読み方
Puget Systemsの2023年テストはBlender 3.4のGPUモードでW7800を測り、スコア2,556を報告しました。同じ環境では前世代W6800が1,966、上位W7900が3,594、競合RTX A5000が5,196です。W7800はW6800より約30%高いスコアで、同テストのA5000に対しては約49%でした。数字はテストに使ったBlender 3.4と当時のドライバーに限定した比較です。Puget SystemsはHIP-RTの機能対応状況も性能差の要因として論じています。
A5000のVRAMに収まる規模のシーンでレンダリング時間を優先するなら、Puget Systemsの同時代の測定ではA5000に軍配が上がります。大きなシーンでメモリ容量が先に制約になる場合は、W7800の32GBが比較上の強みです。二つのGPUを比較する際に、レンダリングベンチのスコアと扱えるシーン容量を同じ欄に混ぜない方が判断しやすくなります。
実測スコアを制作へ置き換える視点
Puget SystemsのBlenderスコアは、同じシーンと設定を複数のGPUで実行した相対比較です。スコア2,556を「1フレーム何秒」と直接読む値ではありません。使う作品のポリゴン数、テクスチャ解像度、サンプル数、レンダリング解像度が変われば所要時間も変わります。そこでW7800を選ぶ判断では、第一にシーンが32GBへ収まるか、第二に同条件のベンチマークで希望の処理時間に近いかを確認します。
Blenderのビューポート操作とCyclesの最終レンダリングは処理が異なります。W7800の32GBは巨大なシーンをGPU上へ保持する際に効きます。シーンがVRAMに収まった後のレンダリング時間は、Puget Systemsの同条件のスコアで競合GPUと比べられます。W7800の利点は大容量VRAMを持つ業務用カードを一枚で使える点で、Puget Systemsのテストはレンダリング速度の現実的な位置を示します。
32GBと48GBの選び分け
W7800には48GB版もあります。AMDの仕様では48GB版も70 CU、45.2TFLOPSのFP32理論ピークを持ち、メモリ帯域は最大864GB/sへ増えます。巨大なシーンが32GBを超える作業では容量の差が直接効きます。一方、公開されているPuget SystemsのW7800スコアは発売時の32GB版であり、48GB版を同条件で測った結果ではありません。48GB版のCycles速度について、メモリ帯域の数字から単純な倍率を宣言することはできません。
Blender中心のPCなら、まず制作中の最大シーンが32GBに収まるか、その次に完成までのレンダリング時間を短くしたいかを整理します。容量が足りるならW7800 32GBの公開実測と価格を比較でき、足りないなら48GB版や別の大容量GPUへ対象を広げられます。導入時の電源はW7800が260W、8ピン2基、推奨最小PSUが700Wです。Blenderを動かす一台として組むなら、W7800の電源記事と容量比較記事も合わせて参照してください。
