W7800とR9700の選択基準

32GBの業務用GPUを探すと、RDNA 3世代のRadeon PRO W7800と、RDNA 4世代のRadeon AI PRO R9700が候補になります。VRAM容量は共通ですが、AMDが示す製品の重点は異なります。W7800は設計・可視化などのワークステーション作業、R9700はローカルAIと大きなモデルの処理を前面に出しています。AMDの製品仕様一覧と両製品の仕様を基に、作業に直結する差を整理します。

項目 W7800 AI PRO R9700
世代 RDNA 3 RDNA 4
GPUメモリ 32GB GDDR6 32GB GDDR6
最大メモリ帯域幅 576GB/s 640GB/s
PCIe 4.0 x16 5.0 x16
ボード電力 260W 300W
補助電源 8ピン×2 12V-2x6
FP16行列理論ピーク 90.4TFLOPS 191TFLOPS

FP16行列の理論値はR9700が大きく上回ります。AMD資料の用途もR9700ではAI推論と開発が中心です。この表はアプリの処理時間を直接示す値ではありません。AIソフトが新しい命令やライブラリーを利用できるか、モデルが32GBに収まるかで結果が変わります。

AI処理と32GBの意味

AMDのR9700製品ページは、RDNA 4、64 CU、128基のAIアクセラレータ、32GB、640GB/sを示しています。W7800はRDNA 3、70 CU、32GB、576GB/sです。CU数だけを見るとW7800の方が多いものの、世代が異なるためCU数の大小だけでAI性能を比較できません。AIを主目的に新規購入するなら、R9700の新しいAIアクセラレータとソフト対応を評価する理由があります。

両者のVRAM容量は同じなので、モデルを一枚の32GBへ収める制約は共通します。より大きなモデルを一枚に置きたい場合、W7800の48GB版という別の選択肢が出てきます。その場合はメモリ帯域や価格も変わるため、「W7800」という同じ名前でも32GB版と混同しない比較が必要です。

制作・CAD用途の実測

Puget Systemsの2025年業務GPUテストはW7800とR9700を同じ測定環境に含めています。Revitのグラフィック処理ではW7800が上位群に入り、R9700はそれより低い位置でした。SOLIDWORKSでは複合スコアだけでなく、モデルや描画操作ごとに傾向が変わっています。CAD用途では、Revitのグラフィック処理でW7800が上位群に入るなど、操作別に優劣が変わります。

W7800の32GBとECC対応メモリ、DisplayPort 2.1の4端子構成は、既存の制作環境を組み立てる上で分かりやすい仕様です。R9700の出力端子はパートナー製カードごとに構成が変わり、AMDはGPUとして最大4画面に対応すると案内しています。複数画面の設計席へ組み込むなら、購入するR9700のカード型番で端子を確認する必要があります。

理論性能の差の扱い

AMDのW7800仕様はFP32理論ピーク45.2TFLOPS、R9700仕様は47.8TFLOPSです。FP32の数値差は約6%ですが、FP16行列の理論値は90.4TFLOPS対191TFLOPSと大きく異なります。新しいAI命令を使う処理と、従来のグラフィック処理を一つの「GPU性能」でまとめられない理由です。

PCIeもW7800の4.0 x16とR9700の5.0 x16で世代が変わります。GPUメモリ内で完結する作業ではバス規格より内部処理が効きます。CPU側とGPUの間で大きなデータを頻繁に動かす構成では、PCIeの条件も評価対象になります。R9700の新しさを発揮できるアプリとPCを用意できるかが、仕様表以上の差を生みます。

制作ソフトを併用する場合は、作業時間の多いアプリの実測値を優先します。W7800のECC対応32GBとR9700の新しいAI演算機能は、用途によって重みが変わります。

電源と導入費

W7800は260Wと8ピン2基、R9700は300Wと12V-2x6です。AMDの推奨最小電源はそれぞれ700Wと750W。既存ワークステーションの電源や配線をそのまま使いたい場合、この40W差とコネクタ規格の差は組み込み判断に直結します。AMDの製品ページの値を基準に、カードの寸法、冷却方式、利用する電源ユニットの端子まで一体で評価します。

結論として、ローカルAIの新規構成ならR9700を先に検討し、CADや制作ソフトの既知の実測を重視するならW7800を候補に残せます。価格面では国内のW7800掲載価格と在庫状況も加味したいところです。R9700と比較してW7800を選ぶなら、狙いがCAD性能なのか、既存筐体との互換性なのかを明確にすると、必要な追加調査も絞れます。